いつもとなりにはコーヒーがあった
朝ごはんの時、仕事中、友達とカフェでおしゃべりをする時…
生活の中のあらゆる場面で登場するコーヒーは私たちの暮らしの「名脇役」ともいえるでしょう。
さまざまな人の「となりのコーヒー」にまつわるストーリーを聞くシリーズ。
まずはSPROUTのスタッフから、好みのコーヒーと合わせてご紹介します。
#2 NICARAGUA La Pena NaturalChicchi BARISTA : 偶然は偶然が繋がって起きるから偶然
「私の好みのコーヒーは浅煎りで、結構フルーティーなコーヒーが好きです。SPROUTでいうとニカラグアとかホンジュラスとかエチオピア…ひとつあげると…、ニカラグアが好きです。」
「いつもとなりにはコーヒーがあった」シリーズ。今回はSPROUTでバリスタとして働く”ちっち”のおすすめコーヒーとそれにまつわるストーリーをご紹介。
「ちっちの好みのコーヒーってどんなコーヒー?」
こんな前振りのない質問からストーリーは突然はじまった。
急にそんな質問されても…、と困惑気味なちっちに話は過去へと遡る。
「コーヒーを仕事としてはじめたのは2013年。今から7年前に東京で友達とお店を出した時にコーヒーを扱おうということになって、エスプレッソマシンを入れて初めて触ったのもそこです。友達伝いにコーヒー屋さんがいて、オープンして数ヶ月はその人がお店に立って教えてくれました。」
『コーヒーは音と聞いて、色を見て覚えるんだ』と師匠はまるで職人のよう。
「コーヒーは最初から浅煎りでした。全く抵抗なかったです。最初にラテで飲んだんですが、砂糖入ってないのにめっちゃ甘いと感動した気がします。苦味は全くなくミルクの甘さとコーヒーのフルーティーな香りとが合わさって、今まで飲んだことのないコーヒーでした。」
ちっちは過去を振り返りながら、つい最近のことのように話をする。僕もSPROUTをはじめて10年経つけれど、その当時の記憶はちっちと同じようにはっきり覚えていた。エスプレッソマシン設置の日にマシンの代理店の九法さんと札幌の横井珈琲の横井さんが、猛吹雪の中、車を運転して「コスタリカ エルバス」を抱えて来てくれた。その時に初めて飲んだコーヒーの美味しさは鮮明に覚えている。偶然にも今、その「コスタリカ エルバス」は自分が焙煎してお店で季節の旬豆として提供させてもらっていた。そんな偶然の一致に思い更けている時だった。
携帯で何か調べ物をしていたちっちが急に声を出したので、僕はビックリした。
「一番最初に飲んだそのラテは、ニカラグアのナチュラルかも。」
「あっ!今SPROUTで好きなコーヒーにあげたニカラグアと同じじゃん!すごい!」
浅煎りでフルーティーなコーヒーに出会ってなかったら、今もコーヒーに携わることはなかったかもしれないというちっちだが、旦那さんと出会い、2016年の結婚を機に東京のお店を辞め、旦那さんの故郷である北海道に移住を決めた。
「5月に倶知安に移住してのんびり割りのいい仕事でもいいかなぁって思ってて、たまたまSPROUTにコーヒー飲みに来たらスタッフ募集してるよって。5月の初めに引っ越してきたばかりなのに5月の終わりにはもうSPROUTで働いてました。」
今回のニカラグアの偶然の一致といい、ちっちには理屈では計り知れない感覚的なことで運とか縁を呼び寄せる何かがあるのかもしれない。
「コーヒーは自分で飲むより誰かに淹れることの方が楽しいです。きれいなラテアートが描けたり、ドリップで持ち味を引き出せた時や、焙煎からの日数で味が違う、私はコーヒーをつくるのがなんか面白いです。自分が好きだからっていうのもあるかもしれないけど、ニカラグアはきれいに淹れられます。アイス、ホット、ラテの時とで全然表情が違うから、いろんな飲み方で飲んで欲しいです。」
ちっちの持つ感覚では、ニカラグアは他のコーヒー豆とは違う飲み比べ甲斐があるそうだ。
暑い日に太陽を浴びながら飲む常夏なイメージで。アイスではすっきり甘く、ホットではサルサソースやタバスコのようなスパイシーな印象があり、ラテで飲むとバナナミルクのような甘さを感じるという。
「酸っぱいコーヒーとかが苦手っていう人に、シングルオリジンのお豆の入り口としてニカラグアのお豆でコーヒーを飲んでみて欲しいです。」
最後の一言は、東京でちっちが体験したコーヒーの出会いに通じるものを感じた言葉だった。
コーヒーに対して決して理屈や計算ではない、人との縁と感覚で繋がった言葉。
その言葉と一緒に提供してもらったアイスラテはキンキンに冷えていて、すっきりしていながらもバナナミルクのような甘さを持ち「砂糖が入ってないのにめっちゃ甘い!」と感動するとっても美味しいコーヒーだった。
Chicchi-ちっち (SPROUT BARISTA)
本名、加藤愛(まなみ)。大分県出身 旦那さんと娘と猫と暮らす
方言で「ちっち・ちっち」言ってたことから”ちっち”と呼ばれるようになった
2歳になったばかりの娘と毎日ドタバタな日々を過ごしている◎
Photo : Conor Acutt / Text : Yoshi